連載コラム「美のリズム」
国際薬膳師 岡尾知子

vol.10
ストレスなしだと
老け&体調不良に?

エネルギーに充ち溢れる春。自然界だけでなく、私たちも新しい節目を迎える季節がやってきました。
二十四節気*でいえば、「清明」と「穀雨」。「清明」は自然界で万物が生き生きと輝き出す時期。
「穀雨」とは、大地を潤す天からの贈り物、恵みの雨です。

ご自身やご家族が、入学、転職、転勤など、人生の節目を迎えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうでない方も、春先は何かと忙しく、気ぜわしくなるもの。その影響もあり、春は期待、不安、緊張が重なりやすく、一年の中でストレスを抱えやすい季節といえます。

*二十四節気:一年を二十四に分けてその区切りで季節の節目を表す”暦”。

東洋医学でいう
「7つの感情」とは

検査しても原因のわからない不調はストレスのせい、などとといわれます。それは、感情や情動に関与する脳が自律神経をコントロールする脳に影響を及ぼすから。自律神経が乱れ、ホルモン分泌などに変調をきたし、その結果、体にさまざまな不調が起こってくるのです。

2000年以上前に生まれた中国医学の古典には、不調と感情との関係がはっきり記されています。「病気が発生する内なる原因は、内面に湧き起こる感情である」と。
感情を「怒・喜・思・憂・悲・恐・驚」の7つ(七情)に分けて、7つの感情が偏らず、バランスよくあることが大切と説いています。感情のどれかが偏って突出してしまうと、それが内臓に影響して病気や不調を起こすと考えているのです。

確かにストレスといっても「イライラ」「クヨクヨ」「めそめそ」「びくびく」などいろいろなタイプがありますね。それらを分けて考えているところが、東洋医学のユニークなところ。もしかすると「ストレス性」と一言で片づける現代医学より奥が深のではないか…。
そう思えてなりません。

適度なストレスによって
人は輝ける

では、ストレスは全くないほうがよいのでしょうか。答えはNO。東洋医学で「感情はどれもバランスよく出現するのがよい」とされているように、適度な緊張があるほうが、むしろ生き生きと活動できるのです。

例えば「今、話題の俳句の会に思い切って入ってみようかな」と思ったとしましょう。初めて参加するときは胸がワクワクしますが、それ以上に大きなドキドキがあるはずです。
「まったくの初心者だけど大丈夫?」「どんな人が来ているんだろう」と、心配事が次から次へと湧いてくるかもしれません。でも、思い切って行ってみると、新しい出会いや上達していく楽しさなど、さまざまな喜びが得られます。小さなストレスをクリアした先には、それまで味わったことのない充実感や達成感があるのです。

ストレスに強い人は、こうした経験をこれまでにたくさん味わい、ストレスを肯定的にとらえられる人なのです。まさに「ストレスを味方につけている人」。うらやましくなりますね。

行動することで
ストレスを味方につける!

では、ストレスを味方につけるために、どんなことを心がければよいのでしょうか。今の時季にぜひ試していただきたい方法は、「志を立て、積極的に行動すること」です。

もちろん、新しい趣味や学びをスタートするのもおすすめ。でも、決して特別なことでなくてもOKです。
・1時間早く起きてウォーキング
・お風呂で必ず頭皮マッサージ
・毎日腹筋30回を目指す
などなど、なんでよいのです。今はやっていないこと、できないこと、そして、継続や達成に少しハードルが高いかなと思えることにトライしてみましょう。

「続くかな?」「三日坊主で終わるかも…」と思うことが、志を立てたあなたが感じるストレス。でも、小さなストレスをクリアした先には、「元気になる」「きれいになる」「楽しくなる」というポジティブな気づきが必ずあります。小さなトライとゴールをたくさん積み重ねれば、ストレスは害ばかりでないでないことを実感でき、日常生活で起こるイヤなことを受け入れ、許せるようになってくるはずです。

東洋医学の古典には、七情とともに病気の原因として「労逸」という言葉が挙げられています。「労」とは「疲れること」、「逸」とは過剰に休みをとり過ぎること。何もせず、家でゆっくりする「ストレスゼロ」の日も悪くはありませんが、一日中人とも会わずにゴロゴロしているような生活は、これもまた病気を招く、というわけです。

暖かい春は、自然界も生き生きと目覚めるとき。新しい生活が始まる方もそうでない方も、積極的に動いてみませんか? 動いて、トライして、不安や緊張を前向きにクリアして、今よりもっと輝く自分を手に入れてください。

岡尾知子

美容ライター。国際薬膳師。鍼灸師。国際中医師。美容ライターを経て東洋医学の世界へ。雑誌やWebでライターとして活動しながら鍼灸師の資格を取得。現在、鍼灸の施術と薬膳教室の主宰も行っている。