連載コラム「美のリズム」
国際薬膳師 岡尾知子

vol.11
太陽は若さの敵?味方?
紫外線の過剰ケアに要注意

新緑が芽吹くこの時季は、一年の中で最も過ごしやすい季節のひとつです。5月の二十四節気は、「立夏」と「小満」。
春らしい陽気が増えてきたと思ったら、暦の上ではもう夏がやってきます。実は、この時季、ひと足先に夏を先取りするのが紫外線量です。気象庁のデータでは紫外線量が急激に増えるのは5月。夏至に向けて昼間の時間がぐんぐん長くなる月なのです。そこで考えたいのが、紫外線対策です。

二十四節気:半月ごとの季節の変化を示す暦。それをさらに分けて自然界の移ろいを知らせるのが七十二候。

紫外線を浴びないほうが美容にいいの?

紫外線といえばシミ、そばかす、シワ、たるみなど、肌老化の原因となる悪者…。これは、美容意識の高い女性だけでなく、最近では男性にとっても常識となっています。
特に、40代以降は、若い頃、小麦色の肌がもてはやされた世代。過去の日焼けがシミにならないように、帽子や手袋などですっぽりと肌を覆っている人もいますね。でも紫外線は、本当によくないものなのでしょうか。

東洋医学では、自然界を〝陰〟と〝陽〟に分けて考え、それぞれが拮抗、消長することでバランスが保たれていると考えます。
日光の恩恵を受けられる春から夏は、外に出て活動することが健康の秘訣。それを行わないと体のバランスが崩れて病気になりやすくなると考えるのです。

日差しを浴びるメリット

カルシウムを作り出し、骨が丈夫に

骨は、新しい骨をつくったり、古い骨を壊したりして絶えず代謝を繰り返しています。新しい骨をつくるには、
骨の材料であるカルシウムを吸収することが重要。それに必要なのが、ビタミンDです。
ビタミンDは、魚や干し椎茸などの食べ物からも摂取できますが、紫外線を浴びると体内で生成されます。

紫外線を極端にカットしてしまうと、ビタミンD不足でカルシウムが骨に沈着しにくくなってしまうおそれが。
女性ホルモンの減少により、骨粗しょう症のリスクが高まる更年期以降の女性には、過剰なUVカットは考えものといえるでしょう。

セロトニンが分泌され、いらいらを解消

太陽光は、心身のバランスをとるのに重要な働きをします。そのカギを握るのが、メラトニン、セロトニンという2つのホルモンです。
メラトニンは夜に分泌され、睡眠を促すホルモン。体の修復を行う成長ホルモンとも密接な関わりがあります。
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、心の安定を保つ働きがあります。

セロトニンは、朝、太陽の光を受けると分泌が高まり、不足すると集中力の低下、イライラ、うつなどの原因になります。
2つのホルモンは、まさに東洋医学における「陰」と「陽」の関係といえるでしょう。
朝いちばんにカーテンを開け日光を浴び、午前中から外に出て活動することが、良好な体内リズムと心身のバランスにつながるのです。
さらにメラトニンは質に高い眠りにも関与します。

紫外線の害を防ぐには…

そうはいっても過度な日焼けなどは、老化を進行させるのでおすすめできません。
では、どうすれば太陽の恩恵を賢く受けられるのでしょう。

サングラスで日差しをカット

まず意識したいのが目から入る太陽の光です。紫外線は、皮膚だけでなく目にも影響を与え、ドライアイや白内障などの眼病の原因となります。目の老化を早めることにもつながるので、日差しの強い季節、時間帯はUVカット効果のあるサングラスをかけましょう。

露出部分は日焼け止めを

紫外線を無防備な状態で浴び続ければ、シミやそばかす、シワ、たるみなどの原因になります。
とくに顔、首すじなどには、日焼け止めを塗ることを心がけてください。

手のひらを太陽にかざす

ビタミンDをつくるために必要な紫外線を効果的に取り入れるなら、てのひらがおすすめです。
夏なら15分程度、手のひらを太陽にかざすと、日焼けを気にすることなく、ビタミンDをつくることができます。

抗酸化作用のある食品を食べる

紫外線をたくさん浴びると、老化の原因となる活性酸素が発生します。
それを防ぐためには、抗酸化作用のある食品を摂ることが大切です。

ビタミンなら、βカロテン、ビタミンC、ビタミンE。ベリー類やワインに含まれるポリフェノールなどにも抗酸化作用があります。
特に日差しの強いこれからの季節はフルーツや夏野菜をしっかり食べたいですね。

体にとってメリットも大きい太陽の光。心も体も「美しく若く」を目指すなら紫外線の害を防ぎながら、お日様の恵みを味方につけるのが正解です。紫外線を正しく理解して上手に太陽と付き合っていきましょう。

岡尾知子

美容ライター。国際薬膳師。鍼灸師。国際中医師。美容ライターを経て東洋医学の世界へ。雑誌やWebでライターとして活動しながら鍼灸師の資格を取得。現在、鍼灸の施術と薬膳教室の主宰も行っている。