連載コラム「美のリズム」
国際薬膳師 岡尾知子

vol.5
「温め」だけじゃない
冬本番前の〝冷え取り生活〟

11月の二十四節気は「立冬」と「小雪」。自然界は徐々に葉を枯らし、休息の時期に入ります。東洋医学の古典には、「冬は閉蔵」の季節と記されています。閉蔵とは、万物が枯れて活動的なエネルギーを内に潜伏させた状態のこと。寒い冬はパワーを消耗させないように心がけ、ゆっくり過ごすのが、自然の変化に合わせた健康な暮らし方だと考えられていました。
寒さが厳しくなって冷えが深刻になる前に、体の準備をしておくことが大切です。

そこで、冷えの原因をチェックしていますぐ実践したい予防のポイントをご紹介します。特に冷え性の方は思い当たる原因がないか確認したうえで、生活改善を行いましょう。

原因1 血液循環の悪さ

冷えときくと、体が物理的に冷えていると考えるかもしれません。でもそれは大きな勘違い。私たちの体には恒常性(ホメオスタシス)を維持する機能が備わっていて、寒い冬でも平熱がきちんと保たれます。ではなぜ冷えるのか。理由は、血液循環が悪くなるからです。血液は体の熱をすみずみまで届ける役割を果たしていますが、血流が滞ると手足の末端まで血液が行き渡らず、冷えが進んでしまうのです。

筋肉の減少、運動不足

筋肉の減少も、重要な冷えの原因のひとつです。体の中で最も多くの熱を生み出しているのが筋肉。男性より女性に冷え性が多いのは、筋肉量が少ないからにほかなりません。日ごろから運動不足の人は、筋肉による熱の産生量が少ないため、冷えに陥りやすくなります。さらに加齢によって成長ホルモンが減少すると筋肉量はますます低下。ますます冷えが深刻化する恐れがあります。

ストレス、リズムの乱れ

体温調節機能をコントロールしているのは体の司令塔である自律神経。暑いときは血管を拡張させて体温を発散させ、寒い冬は血管を収縮させて熱を逃がさないようにします。ストレスや、生活リズムの乱れによって自律神経のバランスが崩れると、体温調節がスムーズにできなくなります。そうなると体が冷えてしまいます。寝不足だと手足が冷たく感じるのは、自律神経の乱れによるものと考えられます。

4つの冷え対策

冷え症を根本から改善するなら、厚着をして体を温めるだけではダメ!こんな工夫をしてみましょう。

朝いちばんで体を動かす

東洋医学では、体を温める「陽気」は朝から昼にかけて増加するといわれています。この陽気をしっかり体に取り入れるために、午前中にしっかり体を動かして活動しましょう。おすすめは、朝いちばんの軽い筋トレ。特に、お腹、お尻、太ももなどの大きな筋肉を使うのが有効です。腹筋やスクワットなどを、辛く感じない回数でよいので、毎朝続けてみてください。

筋肉の材料アミノ酸を補給

熱を発する主役である筋肉を減らさないためには食事が肝心。やせたいからと厳しい食事制限を行うのはやめましょう。特に重要なのは筋肉の材料となるタンパク質をとること。肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などをきちんととってください。不足しがちな方は、アミノ酸のサプリメントを利用するのもよいでしょう。

深い呼吸で巡りをよくする

体温調節を担っている自律神経の調整には深呼吸が有効です。特に仕事や家事に追われているようなときは無意識のうちに呼吸が浅くなっているもの。そんなときは体を伸ばしながら、ゆっくりと息を吸い、深呼吸してみましょう。心身の緊張がゆるみ、自然と血液循環が促されます。仕事の合間や食事の前、お風呂に入ったときなど、ホッと一息つくときの深呼吸でリラックス。

ぬるめのお風呂で
疲れを解消

自律神経のリズムを整えるのに最も重要なのが熟睡です。ぐっすり眠れないという方は、寝る前にシャワーだけで済ませずに、ぬるめのお湯に浸かって心身をリラックスさせましょう。お好みの香りの入浴剤を入れるなどしてリラックスすれば日中のストレスがほぐれます。ぐっすり眠ってすっきりと目覚めましょう。

いかがですか? 冷え性の方は、まずはご自身の生活を振り返り、冷えの原因を取り除く生活習慣の改善を行ってください。

岡尾知子

美容ライター。国際薬膳師。鍼灸師。国際中医師。美容ライターを経て東洋医学の世界へ。雑誌やWebでライターとして活動しながら鍼灸師の資格を取得。現在、鍼灸の施術と薬膳教室の主宰も行っている。