連載コラム「美のリズム」
国際薬膳師 岡尾知子

Vol.12
日本人の不調の根源は湿気にあり!

6月の二十四節気は芒種と夏至。七十二候では梅の実が熟し、あやめの花が咲く頃です。からりとした空気から一転。どんよりとした雲に覆われ体調も変化しすい毎日です。「気分が重い」「足がむくむ」といった悩みを訴える人が急増する梅雨時の不調について考えてみます。

二十四節気:半月ごとの季節の変化を示す暦。それをさらに分けて自然界の移ろいを知らせるのが七十二候。

まずはジメジメ体質チェック!

自分は湿気に強いのか弱いのか。
下の項目に当てはまるものが何個あるか数えてください。

□冷えを感じる(手足、腹、腰等)
□疲れやすい
□下痢をしやすい
□上半身に比べて下半身が太い
□顔色が黄色っぽい(以前より黄色っぽくなった)
□すぐに眠くなる
□くよくよ悩むほうだ
□乗り物酔いしやすい
□甘いものが好き
□風邪をひきやすい

4つ以上に該当した人は湿気に弱い「ジメジメ体質」の人。
湿度が高くなるこれからの時期に調子を崩しやすい傾向があります。
湿気は体にどんな影響を及ぼすのか東洋医学の視点から解き明かしていきましょう。

体がだるく、むくむ

日本漢方の元になっている中国医学では、病気の原因として季節の変化を重視します。
季節は、自然界の動きが影響していて、節目ごとに風・暑(火)・湿・燥・寒の5種類の特徴が現れるとしています。
梅雨時に旺盛になるのは「湿」。湿は下に向かって流れる〝水〟の性質をもつため、体内に侵入すると、だるや、頭の重い痛み、下半身のむくみなどの症状が起こるのです。

体の冷えを生む

さらに厄介なのは、「湿」には水の冷たい性質があることです。この時期は気温が高めで、蒸し暑い毎日が続きます。
蒸し暑さとは汗ばむような「暑さ」と、湿気による「冷え」という相反する要素が同居した状態。そのため、冷えを自覚しにくく、逆に薄着になったりして冷えを加速させてしまうおそれがあるのです。
もともと冷え性体質の人は、湿気でさらに体を冷やし、手足やおなか、腰が冷たくなり、冷え体質を悪化させがつなので注意したいですね。

消化機能を乱す

さらに東洋医学では「湿」は消化機能に悪い影響を与えると考えられています。
この時期、冷たいもの、甘いものを食べすぎると、「湿」によって機能が低下した胃腸がさらに消耗し、下痢や食欲不振といった症状に陥る可能性があります。
最初のチェックテストで、「下痢しやすい」「甘いものをよく食べる」などに当てはまった方は、特に食生活に気を付けてください。

夏至と梅雨が重なる気候

東洋医学では、季節の変化に合わせて暮らすのが健康維持の基本。一年で昼間の長さが最も長い夏至の前後は、
陽気が極まる時期で温かい太陽の気をたっぷり取り入れるべき季節です。ところが夏至は梅雨の真っ最中。重い雲に覆われ、
陽気を十分に取り入れることができないのです。さらに、四方を海に囲まれた島国である日本は、絶えず海からの湿った風を受けています。
そんな気候の梅雨時こそ心がけたいのが、次の3つのポイントです。

1 体を温める

まず気をつけたいのは冷えの予防です。湿気による冷えは、体の下のほうに現れやすいので、腰から下を冷やさないようにしましょう。
また湿気の冷気は消化機能を傷めるので、水分補給は温かいお茶がおすすめ。利尿採用のあるはと麦茶やとうもろこしのお茶(コーン茶)にすれば、水分の排出を促すのでむくみを予防できます。

2 甘いものを食べ過ぎない

東洋医学では、甘い味、特に砂糖などの甘さは消化機能を消耗させると考えます。
甘くて冷たいアイスクリームなどを食べ過ぎると、消化機能が低下しやすくなりますから、ほどほどに。

3 かかと上げ運動や足首回しを

足のむくみは、血液やリンパの流れが滞ることで起こります。
それを助けるのが「第二の心臓」といわれるふくらはぎの筋肉を動かすこと。お勧めは、立って両足のかかとを上げ下げする運動です。
また、足首回しも循環の改善に効果的。椅子に座ったままでも湯船の中でも、足首を回せば、むくみが改善するでしょう。

気分が重くなりがちな湿気の季節は梅雨どきから夏場まで続きます。
でも、少しだけでも暮らしぶりに気をつけて、体調を調えて気持ちよく過ごしましょう。

岡尾知子

美容ライター。国際薬膳師。鍼灸師。国際中医師。美容ライターを経て東洋医学の世界へ。雑誌やWebでライターとして活動しながら鍼灸師の資格を取得。現在、鍼灸の施術と薬膳教室の主宰も行っている。