連載コラム「美のリズム」
国際薬膳師 岡尾知子

vol.2
「暑さに(あた)る」夏バテのご注意を

若さと美貌の大敵は暑さ!まだまだ夏本番という時期ですが、暦の上では8月上旬は早くも「立秋」、そして下旬は「処暑」。秋がスタートし、暑さがだんだんと収まってくる頃とされています。そして、この時期に気をつけたいのが夏バテです。
暑い真っ盛りにバテるのではなく、夏も終わりに向かおうかという頃に襲ってくるのが夏バテです。

東洋医学では、厳しい暑さによって起こる熱中症のような症状を「中暑(ちゅうしょ)」と呼びます。中暑の中は的中の中で、「あたる」という意味。普通は、体表から体の奥へと徐々に侵入する暑さの邪気(病気の原因)が、いきなり体の奥に入ってしまい、重篤な症状を起こすという意味です。
中暑になると、口が乾いたり、頭痛やめまいが起きたり、不眠になったりするとされていますから、これはまさに熱中症の症状。重篤な症状に陥らないためにも、しっかりと予防策をとっておきたいですね。

もうひとつ、注意したいのは、夏の虚労、夏バテです。夏バテの原因の奥にあるのは、暑さによる食欲不振からくる「気」の低下。さらに、大量の汗をかいて体に必要な「気」と「血」が消耗することです。とくに、厳しい暑さが長く続く今年の夏は、知らず知らずのうちに体が慢性の虚労状態に陥っている危険性が大!
まだまだ続くきびしい夏を乗り切って、50代でも若さを保つために毎日の生活の中でしっかり対策をとっていきましょう。

暑さをしのぎながらパワーをチャージ!

この時期に行いたい対策は、体を適度に冷やしながら不足しがちな「気」「血」を補うケアです。生活の中のちょっとした注意がたいせつです。

苦味のある食材で
熱を取り除く

最近では、塩分やミネラルを補えるスポーツドリンクや経口補水液を手軽に入手できますが、さらに、食べ物からも水分とミネラルの補給を行いましょう。
とくにお薦めなのは、トマト、きゅうり、苦瓜などの夏野菜。水分を豊富に含み、体を冷やす性質のあるこれらの野菜を食べて、食欲不振で不足しがちなミネラル分を補うことができます。
また、薬膳では、苦味には熱を冷ます働きがあるとされるので、苦瓜や緑茶など苦味のある食材もおすすめです。

おなかを温めて
消化機能をサポート

暑いからと体を冷やすばかりがいいのではありません。冷やしすぎは消化機能が低下します。暑さをしのぎながら、おなかを温めるケアを並行して行いましょう。この時季に「おなかがゆるくなりやすい」という方は要注意。

掌でおなかに触れてみて「冷えているな」と感じたら、ゆるめの腹巻をしたり、おなかまですっぽりカバーできる下着を着用したりして! また、暑くてもシャワーだけで済ませず、湯船に首までしっかりと浸かり、体を芯から温める習慣をつけると、暑さで消耗してしまった体の疲労回復を図れるでしょう。シナモン、胡椒、山椒、唐辛子といったスパイス類を意識して摂れば、おなかを内側から温めることができます。

暑さに負けて、食事も簡単なもので済ませがち。でも暮らしの中のちょっとした工夫で、若々しい生活を維持できます。無理せず、頑張りすぎず、上手に暑さと付き合っていきたいですね。

岡尾知子

美容ライター。国際薬膳師。鍼灸師。国際中医師。美容ライターを経て東洋医学の世界へ。雑誌やWebでライターとして活動しながら鍼灸師の資格を取得。現在、鍼灸の施術と薬膳教室の主宰も行っている。